ピアノと冒険の記録

ドイツ留学4年目に入ったので、何か形に残るものを始めようと思い立ち、ブログを始めました。

目次
Goethe Zertifikat B1 独学攻略法
ドイツ旅行・留学 おすすめの持ち物
音楽用語のドイツ語が学べる便利な本

自己評価を上げることの大切さ

ヨーロッパでは、日本の美徳とされる「遜(へりくだ)り」が裏目に出る、という場面があります。これは、海外に来て大きなカルチャーショックを受けたことの一つです。もちろん、普段から謙虚であることは、どの国にいても大事です。しかし、謙虚でありながらも、しっかり自己評価を上げておく必要があるのです。

ヨーロッパでは、「自分はこんなことができるのだ」とアピールしなければならない瞬間が多く訪れます。これは、日本でいうところの、就職活動における面接で自己アピールする瞬間と似ているでしょう。

日本では普段からアピールしていると、例え自分が良くできていたとしても、「何? 自慢?」と思われてしまうこともあるかと思います。「とんでもないです、全然です」「自分なんかがそんなことを…」のように謙遜することを、自然と習ってきたのではないでしょうか?

 

最初、海外の流儀というものを知らなかった私は、大きなチャンスが来た時にも関わらず「私は完璧ではありませんが、ベストを尽くします」「まだ無名のピアニストですが、頑張ります」と口にしてしまったことがあります。言った瞬間、相手の顔が明らかに曇ったのを感じ取りました。そして私は結果的に、そのたった一言によってチャンスを帳消しにしてしまう、他の自信ある人に取られてしまう、という苦い経験をしたのでした。

 

確かにそんな言い方をしたら日本でも駄目だろう、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし私にとってこれは、「お口に合うかわかりませんが、どうぞ」「いえいえ、私は大したことないです。」と当たり前に今まで謙遜してきたその延長線上で言ったことなのでした。

その頃、謙遜する文化を持ち越している上に、とことん低い自己評価まで背負っていたのでした。

 

それは、今年の夏に参加させていただいたアカデミーで、とても印象に残ったワークショップでの出来事です。

広いホールに全員で集まり、一直線上に、0%、50%、100%の印を付けます。

 

「みんな、今の自分がアーティストとしてどの位置なのか立ってみて。」

これは、カリン・ベアリース先生という、フランクフルト放送交響楽団でコンサートマイスターリン(コンミス)を務め、フランクフルト音楽大学で教鞭を取り、最近定年になられた先生のワークショップでした。

私は、自分は20~30%くらいだろうと思い、あまり迷わずそこに立ちました。

 

音楽の世界はとてもとても厳しく、どんな素晴らしい賞を獲り続けている友人でさえも「I'm always struggling with myself.(いつも僕は自分自身と苦戦しているよ)」と言っているくらいです。いつも上手くいくことばかりではなく、むしろ納得いかない結果になることの方が圧倒的に多いのです。

伸びしろや、一生芸術を極めていくという観点から見たら、20~30%と考えた私もきっと間違いではないでしょう。

しかし、私が1番下に、誰よりも遥か下に立っていたのです。

 

このアカデミーは、100人ほどから12人がオーディションにて選抜されたもの。

すでにスポンサーが付いている子たちや、人気のある若手の音楽家、すでにたくさんの経験を積んできた人たちで溢れていました。

他の人たちはだいたい50%以上に立ち、1人は99%に立っていました。

 

そうか、私はもっと自分に自信を持ってい良いのか……‼

それが目に見えてわかった瞬間でした。

 

ヴァイオリン専攻のアカデミー生の中から、一人だけベルリンでのコンサートに出演させてもらえるという機会があったのですが、その99%に立った子が選抜されました。

他にも、技術やビジュアルの面で優れた受講生がひしめき合っていたにも関わらず……です。

 

ワークショップの最後に、「先生が立つとしたら、どこに立ちますか?」と思わず質問している自分がいました。

先生「教育者として? 演奏家として?」

私「両方知りたいです。」

ベアリース先生は、0%の位置からゆっくりと考えて歩き始め、だいぶ上の方で足を止めました。

「80~90%ね。私は自分の仕事に自信を持っているし、自分のやっていることを誇りに思っているから。」と穏やかにおっしゃっていた表情が、印象に残りました。

 

私が経験してきた場面はすべて音楽の世界の話ですが、これはどの世界にも言えることかと思います。謙虚であることは、人として大切なことではありますが、謙虚であることと、自己評価が低いこと、自信がないことは似ているようで全く違うのだと、音楽を通して私は学んだのでした。